だが、遅かった。

『小虎ぁぁ!!!』

鞄を手に取ろうとした腕を両手で掴まれる。



『小虎!!

ごめん!本当にごめんね!』


真剣な伏見の目。


見つめ返さずに、ため息をつく。


「もういいって。


…足は?」

『へ?』

間抜けな声で答える。


「バスケットボール、蹴ったんだろ。

怪我は?」




伏見は目を丸くしたまま固まっている。



『…し、してない!!!』

顔が赤くなっている。


至近距離。
伏見がそんな顔をするから、妙に緊張する。


動揺を知られそうで、顔を逸らす。

「よかった。

じゃあ、行くわ」


簡潔に答えると、逃げるように教室を出た。