「伏見…っ!!」

『離して!!!!!』

振り向いた伏見は、泣いていた。


『やだやだやだやだ!!!

アンタなんて大っ嫌い!!信じてたのに!!』

腕を振り払おうと暴れながら、泣き叫ぶ。


「伏見、聞いて!」

『嫌!!!』

「伏見!!!」

強く言うと、下に目線を落とし押し黙る。
伏見は泣き続けている。

俺は誰を幸せにできる?
皆を傷つけている。

何より大切な伏見まで。

「…誤解してる。

俺が好きなのは、お前だけだ」
息を整えながら、告げる。



『……っ

もう無理…っ』

小さなの声が、静かな廊下に落ちる。
そして掴んだ手をゆっくり引いた。


二人の手が離れる。


一つの足音が遠ざかっていく。







ーーー『小虎!可愛くない!?』


こんな時にも、浮かぶのは
伏見の笑顔。明るい声。


好きだ、
喉まで出かかる言葉。

もう言えない。



こんなにも大好きで堪らなくなっていた事に、
今更気付く。