“小虎”

これは俺のニックネームらしい。
不本意ながら。

小幡 虎治
というのが正式な名前である。

縮めて、小虎。


ある人気ドラマで高身長で強面の俳優が、小虎という役を演じていた。

同じ高身長で大柄、強面ときたら、イジりたくなるのが人の性、とでもいうのだろうか。


すごいスピードで、学年中へ、

学校中へ浸透していった。



けれど、
一度も髪を染めたこともない。
ピアスを空けたこともない。

非行に走ったこともない。

きっと俺の経歴は皆にとって期待外れである。


そんな俺が何故小虎になったのかと言うと。




『小虎!可愛くない!?』



「…は?」

見た目が威圧的な俺を怖がって、
隼人以外、誰も話しかけてこなかった高校入学当初。


伏見 百花は唐突に話しかけてきたと思ったら、
俺に変なあだ名をつけた。



新たな気持ちで迎えた門出。

俺の高校生活はこいつとの戦いだと、その時思ったんだ。