雷獣

ぶっ飛ばすなんて物騒なことを言われ思わず偽名を使ってしまった。
「雪か、いい名前だな！」

「はぁ。」
変わらず腕はつかまれたままで逃げられないので観念する。
しばらくすると遠くからバイクの音が複数聞こえる。

「え、呼んだの1人じゃないんですか？」

「おう、変わり者だけど頼りになる人達だから安心していいぞ。」
変わり者なのに安心なんてできるわけないじゃんと思いながらケンとバイクが近づいてくるのを待つ。

「ケンゾー待たせたな！」
そう呼ぶ大きな黄色のバイクに乗った人と

「子猫ちゃんはどこですか～」
と地面を探している赤いバイクに乗って人が来た。

「歩(あゆむ)さん！ケンゾーじゃなくて”ケン”って呼んでくださいって何度言ったら聞いてくれるんすか!!」

「わりぃわりぃ」
と薄っぺらい謝罪をしながらバイクを降りる。

「んで、これが子猫だって？」
そう私を見る歩と呼ばれる人が近づいてきた。

「なんだよ、人間じゃねーか紛らわしいな。」
そういってだるそうに私を見るもう1人の人もバイクから降りる。

「朔(さく)さんもお疲れ様です！本当に猫だと思ってきたんですか？」

「だってこいつが子猫言うじゃねーか茶トラかキジかそれともミケか教えてくんねーんだもん」

「そもそも猫じゃないっすからね！」
そんな会話に置いてけぼりに耐えられず
「あのー......。」と話し出す。