下に降りるといつもと同じ車が止まっていた。

「ごめんね、いきなり呼び出して」

「いいよ、連絡くんじゃねーかなって思ってたから。んで、どこ行くんだ?」

「私が今まで行ったことある場所に連れてってほしいの。」

「なるほどな、積極的に思い出そうとしてるわけだ。」

「何もわからないからってそのままにしたくない。誰かに教えられるくらいなら思い出せる限り思い出したい。」

「分かった、じゃあ行こうか」
洸希にそう言われ後部座席にのり車は走り出す。

私が拓哉達に出会ってから訪れたって場所を洸希と回った。

”皆でバカ騒ぎしたお花見の場所”
”沖まで泳いで戻ってくるのに誰が一番早いか競争して下っ端君の1人が足をつっておぼれかけた海”
”スイカ割をしたいからと言って大きな一玉スイカを探しまわったスーパー”
”洋服を買うために行ったアウトレット”
”夏休みに皆で走った道”

だけど何も思い出せなかった。

お昼になりご飯を食べるために和食屋さんに寄る
随分と上品で品があるお店で看板には”梅の花”とあった。

「よくこんなところ知ってるね」

「最近は来てないけど俺たちの行きつけだよ」

「え?」
そう思いながら暖簾をくぐり引き戸を開ける
ガラガラガラ