雷獣

「家に戻るね、混乱してて少し落ちつきたい。」

「それがいいね、家まで送るよ。」
今まで話さなかった夏惟が立ち上がる
素直に夏惟の後をついて行く。

リビングを出る前に拓哉に言う。

「明日、学校行かないかもしれない。」

「わかった、行きたいときになったら教えて？」

「うん、じゃあまたね」
そう告げリビングを後にする


玄関で靴を履きながら夏惟に聞く

「私は何でそこから飛び降りたのかな」

「なんでだろうね、でも理由もなく命を粗末にする子じゃない事俺たちは知っているから」
ほほえみそう話してくれる夏惟の笑顔に少し救われた。

マンションの廊下を歩きながらぽつりぽつりと話す。

「遥香が知らない自分に向き合う時間が必要だってわかってるから急がなくていいよ。ゆっくり時間をかけて整理すればいい」

「うん」

「聞きたいことがあれば聞けばいい。誰も濁したりしないから」

「うん」

私の家の前につき夏惟が頭にポンっと手を乗せて言う
「今日は温まってゆっくりおやすみ」

「ありがとう、おやすみ」
鍵を開けて中に入りコートだけ脱ぎ布団に入る、天井を見つめながら考える。
私が崖から飛び降りた理由を。

拓哉達は優しいし、下っ端君たちも私を慕ってくれてる。
気軽に話せる洸希もいるし叶葉さんもいる。
こんなに恵まれている私が絶望する理由は何？

自分のことなのに自分が分からない。
片目から涙がこぼれる。