さすがにあたしと勇輝の気まずさは帰りには消えていた。けど、何かが違う気がする。

　「凛、髪になんかついてるぞ」

　「どこどこ？」

　あたしが髪の毛を手櫛して取ろうとしていたら、勇輝が不意に手櫛しているあたしの手を押さえ、もう片方の手をあたしの髪に伸ばした。

　「取れたぞ」

　違和感の理由はこれか。

　「あ、ありがとう・・・」

　勇輝がなんだか優しい。今日１日の行動を思い出すと、確か綾乃と話した後からだ。いつもと違う勇輝にあたしは胸が締め付けられる感じがした。

　この感じはなんだろう？もしや胸焼けか。勇輝には失礼だけど、これだけ優しいと後で何かを要求されるんじゃないかと少し不安なんだよね。

　でも、綾乃達と別れ、家に帰っても何かを要求してくる感じはしなかった。

　なんでまた急にこうなったんだろう？

　あたしの中でこの疑問が頭の中で渦巻く。

　まぁ、いっか、考えるのはやめよう。考えすぎると疲れるしね。

　勇気の優しさの意味にあたしは疑問を持つのをやめた。

　この変化が勇輝にとってどれだけ大切なことなのかも知らずに・・・。