あたしの意地悪な弟

 次の日の朝。

 あたし達は昨日のことで未だ気まずい雰囲気を漂わせていて、お互い口数が明らかに減っていた。

 そんなあたし達に気づき、空気をあまり読もうとしない綾乃と利久斗は直球に聞いてきた。

 「2人ともどうしたの?昨日何かあったの?」

 「確かになんか気まずそうな感じだね!俺との鬼ごっこの後何かあった?」

 言いにくい上に、利久斗なんかに言ったら絶対面白がるに決まってる。昨日の放課後のあれのことを鬼ごっこって言ってるし。

 「言わない。利久斗絶対面白がるし」

 「確かにな」

 これには勇輝も賛成らしい。

 「え~教えてよ~。絶対面白がらないし、馬鹿にしないからさ~」

 もう言い方の時点で信用できないわこいつ。

 「それなら、後でこっそり私に教えてね凛ちゃん」

 綾乃ならきっと馬鹿にしないだろうからいっか。

 「うん」

 あたしは頷いた。

 それを確認した後綾乃は意味ありげな笑みで勇輝の方を見た。

 「なんだよ椿」

 「後でちょっといいかな勇輝君」

 いつもと同じようで何かが違う綾乃の笑みにあたしはなぜか恐怖を感じた。





 その後、利久斗がいないところで綾乃に昨日のことを話した。

 「まるで恋愛もののアニメみたいだね」

 綾乃は笑顔で言う。

 うん、今日も綾乃は可愛いね。

 「いや、恋愛って・・・あたし達兄弟だから」

 恋愛って・・・ないない。あたし達に限ってないでしょ。

 「でも、血は繋がってないよね?」

 「そうだけど・・・」

 「それに、勇輝君の苗字もそのままだし、恋愛できないことはないんじゃないかな?」