営業マンだって言うのに少し明るめの髪は毎日ワックスできちんとセットされていて、すらりとスタイルの良い高身長を生かして、仕立ての良いスーツに身を包み


それに見合うだけの甘いルックスを持ち合わせていて


同じ三十だって言うのに、歳よりだいぶ若く見える。


会話上手で聞き上手。とにかく場の雰囲気を作るのがうまいのだ。


ゆえに女の子からモテる。


それが猿渡。


一方の私は毎日きちんと夜会巻きにまとめ上げた髪に赤い口紅、スーツと言うスタイルを守っている。影で「ドーベルウーマン」と呼ばれるぐらいつまらない女で、


ドーベルウーマンの由来は何か知らないけれど、ドーベルマンみたいに警戒心が極めて強く、縄張り意識も高い為、攻撃的になり易い側面を持ち合わせているからでしょうね。


ふん


まさしくそうよ。


私はお手洗いでスーツに付着した赤ワインをハンドタオルでごしごし。


ああ、もう!


ついてない!!


何で私、猿渡の隣になんて座ってしまったのだろう。本来なら一番遠くに座りたかったのに、私より遅くに来たヤツが私の隣に腰を降ろしたきり、席を外さないから。


私の握ったハンドタオルにどんどん赤い染みが移っていく。それはまるであいつに浸食されつつある自分を表しているようで



嫌になった。





嫌い


だけど


仕事はデキるし、尊敬する部分もある。ちょっと不真面目なところがあるけれどそれをカバーするだけの結果を出している。


いつもふざけているのに、たまに真剣。



それを考えると、どこか憎み切れないところもあって……


何考えてるのよ、私は。