「そんな、わけ……」

本当に、本当に俺は、西間のことをそんな風になんて思っていない。

確かに、そう噂する奴らが居た。

それで落ち込んでいた俺をいつも励ましてくれたのは、他でもない西間だったのにーーー。

「言いたい奴は言わせときゃいいんだよ!
どうせ完璧な西間様に嫉妬してるんだろ?」

冗談混じりに俺を見る、その屈託のない笑顔に何度救われたことか。

そんなことを考えて固まる俺を前に、西間は口の端を吊り上げて笑った。

「ほら、答えられないだろ?

無関係な瑠璃子ちゃんにまで手を出したのは悪いと思ってる。
後から助けてやろうとは、思っていたんだけどな…

やっぱり、友情なんてものは所詮お互い利益を享受するためだけに演っている茶番なんだよ…」

「に、西間…?
前までのお前なら、そんなこと、絶対に言わなかっただろ…!?
何か、あったのか?」

「…その、"前"がいつだかわかんねえが、
最近の俺は全部嘘っぱちだ。
お前が望んだ"西間"の幻。

もっと、ずっと前のことを指しているならーーー。
俺には、確かにあったよ。

バカな甘ったるい妄想のくだらなさに気付けた出来事が、な。」