純情喫茶―恋する喫茶店―

読んだことはないが、名前だけは知っている雑誌だ。

「その雑誌に掲載されている『街中の隠れ家』と言うコーナーをご存知ですか?」

そう聞いてきた朝倉に、
「ああ、それは知りません」

笙は首を横に振った。

そんなコーナーがあるのかと思っていたら、
「そのコーナーに、この店が選ばれたんですよ」

朝倉が言った。

「へえ、そうなんですか」

「ぜひ取材をお願いしたいと思いまして」

そう言った朝倉に、
「あー、取材ですか?」

笙は頭をかきながら聞き返した。

「無理ですか?」

今すぐ取材をさせて欲しいと言う顔をしている朝倉に、
「マダムの許可が下りないと無理ですね」

笙は言い返した。

「取材の許可、ですか?」

「すぐに聞いてきますので、待ってくれませんか?」

「はい、わかりました」

朝倉が返事したことを確認すると、笙は店内へと入った。