純情喫茶―恋する喫茶店―

昼食の買い出しを終えた笙が店に戻ると、1人の男が店の前にいた。

男は普通のポロシャツとズボン、肩にはカバンと言う何の変哲もない格好をしていた。

だけど、一体何なんだ?

「――あの、店に何か用事でしょうか?」

笙は男に声をかけた。

「あ、どうも」

男が頭を下げたので、笙も頭を下げた。

「この店の店員さんですか?」

男が聞いてきたので、
「そうですけど、あなたは?」

笙は答えた。

「初めまして、私はこう言う者です」

男がカバンから名刺を出したので、笙はそれを受け取った。

『雑誌記者 朝倉昌幸』

「記者さんですか?」

そう聞いた笙に、
「『ホールインワン』って言う雑誌をご存知ですか?」

男――朝倉が聞いてきた。

「ええ、知ってます」

笙は首を縦に振ってうなずいた。