純情喫茶―恋する喫茶店―

昼食時。

「んじゃ、行ってきまーす」

笙が店を出た。

「あっちー」

真上を照らす太陽に、笙は倒れそうになる。

さっきまで涼しい店内にいたため、いきなり灼熱の太陽が注いでいる外へ出たせいだ。

躰から汗が噴き出してきたのが、自分でもよくわかった。

そんな暑い中を歩きながら、笙は考えていた。

店を経営するうえでの約束――異性との交際や結婚は禁止――それは、店を始める前に玲奈と話しあって決めたことだ。

自分たちには、それに関係することがあるからだ。

だから客のアプローチは上手に断ってきたし、明菜ともこの間の休日以来1度も会っていない。

会おうと思えば、自分から直接彼女が働いている店に行くことができる。

しかし、今はそれができない。

何故なら、目の前の“あること”を果たすことが先だからだ。