「お前、俺の財布を盗んだだろ!」

「知りません!

わたし、あなたの財布なんか盗んでません!」

大声で怒鳴る男とは対照的に、女子大生は泣きそうな声で言い返した。

「嘘つけ!

お前がぶつかったその時に財布を盗んだんだ!」

そう言った男に、
「知りません知りません」

女子大生は首を横に振った。

何だかかわいそうになってきた。

「ちょっと、やめてくださいな。

かわいそうじゃないですか」

笙が2人の間に入った。

「何ですか、大人げない」

笙は口をとがらせると、男に視線を向けた。