君と花を愛でながら

結局二時間静さんは彼を待っていたけれど、もう日が傾きかけた頃諦めた様子でテーブルから離れた。


伝票を持って歩いてくる静さんを見て、私もレジへ向かう。
なんて声をかければいいかわからなくて、気まずい空気しか作れない気の利かない自分が、嫌になってしまう。



「いつもありがとうございます」



伝票を受け取ってレジに入力しようとすると、静さんの視線が花の陳列の方へ向いていることに気が付いた。



「そのピンクのバラ、すごく大輪ね」

「大きいでしょう? これだけの大きさがあると花瓶に生けても花束にしてもすごい迫力になりますよ」



迫力はあるのに色は淡くて優しい雰囲気が漂う、今お店で一番おすすめしたいと思ってるバラだった。
高価なお花だから余りたくさんは仕入れていなくて他のお花よりも小さめの花入れに入れているのに、思わず目を留めてしまう存在感がある。



「ほんとに綺麗ね。この間見に行った映画にも大きなピンクのバラの花束が出てきて、羨ましいなって思ったの」



バラに近づいて腰を屈め、指先で花びらに触れた後、静さんは突然顔を上げた。



「ね、これで花束を作ってくれない?」