君と花を愛でながら

「あの人が真面目になればそれが一番……」

「ないね、浮気性は病気だよ」

「病気なら治るじゃないですか」

「不治の病」



希望的観測を悉く一蹴されて下唇を噛みしめ下から睨みあげると、まるで駄々をこねる子供を見るような目で憐れまれた。



「……感情移入しすぎたらしんどいって言ったのに」

「だって、そんなこと言ったって」



一人のお客さんと、親しくプライベートのことまで話せたのは静さんが初めてだったのだ。
ただの店員とお客さんでしかないことに変わりはないけど、笑顔で幸せそうにこのお店でお茶を楽しんでもらいたいのに。


それだけなのに、と目が潤みそうになった時、それまで黙って茶葉の補充をしていた一瀬さんが、私達を窘める。



「お客様の噂話を余りするものではありませんよ」

「……すみません」



噂話、のつもりはなかったんだけどな。
一層肩を竦ませて小さくなりながら、私は落ち込む気持ちを誤魔化すように、徐にダスターでカウンターを拭いた。