君と花を愛でながら

小さく舌を出して、ぷいっとそっぽを向いて離れると、片山さんの情けない声が聞こえた。



「えっ、ちょっ、ごめんって」

「しりませーん」



と背中を向けたままカウンターに戻ると、ちょうど静さんが立ちあがったところだった。



「あっ、おかえりですか?」

「ええ、今から映画を見に行く予定なの。篠原監督の、ほら」

「あっ、戦場のバラ? テレビでもすごく宣伝してますよね!」



いいなあ、とうらやましく見つめると、静さんは嬉しそうに笑って聡さんの腕を引く。



「早く行こう? 始まっちゃう!」

「はいはい。……俺、恋愛モノって全く興味なんだけどなあ」



彼はすこぶる面倒くさそうに言いながら、丁度の金額をカウンターの上に置いた。
そんな様子にも、静さんは嬉しそうに頬を綻ばせる。



「ありがとうございました」



必要以上にくっつくこともなく、ただ隣で彼の袖にそっと触れる……それだけなのに。
あの人が連れてる他の女性の誰よりも、幸せそうに笑ってる。


温度差を感じてただただ、苦しい、そんな二人の背中を見送った。