君と花を愛でながら

この頃は私がバイト先で上手くいっている様子なのに安心したのか、悠君のお迎えは毎日ではなくなっていた。
けれど今日、数日ぶりに悠くんが迎えにきてくれて、決心をしたその日に会えるなんて神様にも背中を押されている気がした。


悠くんと二人、駅から家までの道を歩く。
少し高台にある住宅地からは、下を見下ろせる展望台のようなスペースがあった。


真冬の空はまだ早い時間からもうすっかり闇色で、空にも地上にも人工と天然のキラキラが散りばめられている。小さい頃から、ずっと一緒に見てきた景色を目の前に、私は不思議と緊張しなかった。


「あのね、悠君。二月十四日、時間ある?」
「バレンタイン当日?」
「そう! あのね、お店でバレンタイン限定プレートを出すことになって」


今は誰とも付き合ってない、と確信はあったけど。もしも悠くんに気になる人や仲の良い人がいたら、という可能性を私は少しも意識してなくて、当然空いてるものだと思っていた。


「それでね。バレンタインプレート、悠くんにも食べて欲しくて」
「もしかして御馳走してくれるってこと?」
「そう!」


悠くんは、すぐに「いいよ」と頷いてくれるものと思ってた。
けど、ほんの少しの間が生まれて私は首を傾げる。


「悠くん?」
「ん? ああ、大丈夫。わかったよ」


不自然な間は一瞬で悠くんの笑顔でかき消されて、私はすぐに忘れてしまった。