君と花を愛でながら

「元エリートの堅物さんには理解できないかもしれないけどねー。女の子は兎に角イベント大好きなの。バレンタインが近いってだけで友達同士で盛り上がれちゃうもんなんだよ」
「私だってバレンタインくらい理解してます」
「それは当然だっつの。女の子にとっての重要度を絶対わかってない。イベントごと総無視して彼女に愛想つかされたりしそうなタイプ」


言い合いに釣られて二人に交互に視線を移しながら、結論を待つ。


というか、なんだか気になることを聞いちゃった。
元エリートって……このカフェをオープンする前のことかな。


カフェがオープンしたのは一年前なんだから、一瀬さんの年齢を考えれば当然それまでどこかで働いていたんだろうけど。……うわ、似合いそう。


ネクタイをきっちり締めて無表情の一瀬さんは、難なく想像することが出来て思わず含み笑いが漏れたのを、一瀬さんに見つかってしまった。


「何笑ってるんですか、三森さん」
「わっ、いえ! なんでもないです!」


じと、と拗ねたような表情で睨まれて肩を窄めて小さくなった。


そんな、怒らなくても。スーツ姿を想像して、似合うなあと思っただけなのに。
……想像の中のマスターがやっぱり無表情だったことに、うっかり笑っちゃっただけで。


「俺に図星刺されて綾ちゃんに笑われたからって八つ当たりしなくてもいいだろ。ねー綾ちゃん?」
「え? 八つ当たり?」
「違います。話を逸らさないで、バレンタインプレートの試作、早めにお願いしますね」


そう言って一瀬さんは会話を締めくくり、そんな様子を片山さんは「逸らしてんのはどっちだか」と肩を揺らして笑った。