君と花を愛でながら


「……その」

「何?」

「私聞いたんです、このお店を始める理由になった、雪さんとマスターのお話」



余程意外だったのか、雪さんは大きな目を更に大きく見開いて、数度瞬きをする。



「陵が、話したの?」

「はい、忙しすぎて雪さんの体調が悪かったことにも気づけなかったって」

「ああ……体調、ね。まあ、その通りだけど」



何か含みを持たせた言い方に、私は小さく首を傾げ乍ら幾つかの色の細いリボンを作業台に並べた。



「違うんですか?」

「いいえ、それがきっかけよ」



リボンを少し引っ張り出して、花束の茎に添わせて一つ一つ色を合わせてバランスを見る。



「一瀬さんは、穏やかな時間を生きたかったって。合わせようとは、今も思えないんですか?」