君と花を愛でながら


「えっ? そうなんですか?」



驚いて顔を上げる。
てっきり今日は、いつも以上に最後まで雪さんのいう『誘惑』をするのだと思っていた。



「言ってたでしょ? それがタイムリミットだって」



彼女は、視線で『それ』を示した。
私の手の中に束ねられた、薄紫のシオンの花の香りが空気に散らばって淡く漂う。


確かに、この花の入荷がタイムリミットだと言っていたけど。



「……もっと話し合わなくていいんですか? マスターと」

「散々話し合った結果よ。とうに道は違えてたのよ」



そう言って肩を竦めた雪さんの表情は、さっぱりとしたものだった。