この店は、彼女のために生き方を変えようとした一瀬さんの過去の証で、だからこそ大切に守ってきたのだ。
二人で生きるための場所で、一人で。
ここは、彼にとってつらい場所ではないのだろうか。
雪さんともっと、話し合わなくてもいいのだろうか。
そう思うのに、それでも言わずにいられない私は、やっぱり子供だろうか。
過去は過去じゃないの?
今もこの店が大切な理由は、やっぱり雪さんだけなの?
引き留めなければ、すぐにも過去の感情に目の前で浚われてしまいそうで。
人ひとり分開いた空間を埋めるように、一瀬さんの腕に手を伸ばした。
「お店、辞めないでください」
「辞めませんよ、大丈夫……」
シャツをきゅうっと拳の中に握りこむ。
私に視線を戻して、初めて私が泣いていることに気付いたのだろう。
一瀬さんの言葉が一瞬止まった。

