君と花を愛でながら

「花が好きだと言っていたので。こんな仕事をさせるのは、どうかと」


その言葉と一緒に、胸が暖かくなってつい呆けたように一瀬さんの横顔を見つめてしまう。
一目ぼれしたこのカフェのマスターである人が、本当は冷たい人だったりしたらと思うと少し悲しかったけど。


……この人、ちょっとわかりにくいだけで、ほんとはすごく、優しいんじゃないかな。


そんな期待を込めてあんまり強く見つめすぎてしまったのかもしれない。
一瀬さんは、次の瞬間にはすっといつもの無表情に戻って、にこりともせず床を指差した。


「ところで、これは?」
「あっ」


一瀬さんが指差した先には、私が切り花から切って避けて置いた花が幾つか置いてある。
売り物にはならないけれど、まだ傷んでいない花だけを綺麗なまま落として別の新聞紙に分けて置いたのだ。


私はそれを拾い上げて見せながら、マスターに尋ねる。


「マスター、これで、テーブルを飾ったらダメですか?」


新聞紙の上、小さく落とされた花はまだ綺麗に咲いていて、水揚げさえ上手く行けばまだもう少し楽しませてくれるはずだ。


「一輪挿しに、少しずつ挿して。ほら、ガラス窓に近いテーブル席に一つずつ置くんです。きっと表通りからよく見えると思うんですよね」


捨てられてしまう前に。
私が、この店に一目ぼれした時のように、少しでも、だれかの目に留まってほしい。