「……それは、このお店が雪さんのために作られたからですか」
尋ねるのが怖い。
けど聞かずにはいられなかった。
一瀬さんの横顔に、ふっと照れたような色味が差して、私はずきりと胸が痛む。
「俺と雪が働いていた部署は、兎に角忙しいとこでね。ろくに顔を合わさない月もある状況だったけど、充実してた」
恐らくは一瀬さんも無意識に、いつもの敬語ではなくなっていた。
それは、私に気を許してくれているからではなく、きっと今彼の心は過去に浚われようとしている。
ざざざ……と波の音が聞こえた気がした。
過去の想いが押し寄せて、店を満たしていくような錯覚。
「ただ、忙しすぎた……っていえば言い訳か。雪の体調の変化に、俺も雪も気付かなくて」

