車を降りてドアを閉める直前に、助手席側まで身体を乗り出して窓越しに私に言った。
「綺麗さっぱり振られたら報告してね。弱みに付け込むつもりだから」
そんな口説き文句に、私が上手に言い返せるはずもなく。
片山さんもわかっているのか、ふっと鼻で笑って身体を起こして車を発進させてしまった。
「……振られるの前提なんだ」
見えなくなった白いバンを見送りながら、ぽそりと呟く。
「やっぱり、そうなのかなあ」
誰の目から見ても、私は不釣り合いな気持ちを抱いてしまったんだろうか。
黒い空を見上げると、切った爪のような細い月が浮かんで笑っているように見えて、望みはないよと笑われている気がした。

