「……綾ちゃんの、ばーか」
「うぇっ……く……ひ、ひどい、です」
口は悪いけど、優しい。
なんで片山さんをすきにならなかったんだろう。
そのことが余計に苦しくて泣きたいのに、私の奥底から「この人は違う」と声が聞こえてくる。
少し経ってから、車がゆっくりと動き出した。
私は両手で口元を隠して、泣き吃逆を繰り返す。
吐く息の熱さが、自分の気持ちの強さに思えた。
この気持ちを、声にせずに飲み込んだら。
悠くんの時のように、いつか消化されるのだろうか。
こんなに苦しいのに、痛いのに。
消えることなんてありえない気がした。
まだ走り出しもしないまま失恋の気配が漂うのは、初恋の時と同じだ。
私ってそういう運命なのかな。
「うっ……うっ……」
車内で響くのは、私の泣き声だけ。
その間ずっと片山さんは何も言わず、まっすぐ家まで送ってくれた。

