「謝ることない。俺が聞こうとしなかったんだし、最初からわかってたから。ちょっと足掻いてみただけ」
おずおずと顔を上げると、片山さんが口角を上げて笑う。
ゆっくりと頭から離れていく手と私を慰めるような優しい微笑みに、最後まで涙を我慢することはできなかった。
「……ったく、俺にしとけばいいのに。見込みないよ? 多分」
嗚咽を零しながら泣く私に、結構容赦のないことを言う。
私から目を逸らし、フロントガラス越しに店の方を真っすぐ見ていた。
「はい……わかってます」
「追いかけても来ないしね」
私も、店の方を見た。
店内から漏れる灯りの中で、カーテン越しに人影が映る。
一瀬さんは、私が片山さんと帰っても何も気には留めてくれない。
「俺が綾ちゃん好きって知ってて、こうやって送らせるんだからさ」
ずきずきと胸が痛んで、一度壊れた涙腺はもう修復不可能で。
涙を止める役目はしてくれそうになかった。

