「片山さんっ」
駐車場の隅に停めてあるケーキ屋のロゴが入った白いバンまで、ぐいぐい引っ張られながら、その背中の名前を呼ぶ。
だけど彼はおかまいなしだった。
助手席のドアを開け「ほら乗って」と私を押し込むと、すぐに反対側に回って運転席へと乗り込んでくる。
少し怒ったような乱暴な動作で、ドアが大きな音を立てて閉まり、身体がびくっと萎縮した。
片山さんにきちんとお断りする前に、一瀬さんに対してあんな風に縋って泣いてしまったことを悔やんだ。
言わなくちゃ。
いい加減、ちゃんと言わなくちゃ。
「片山さん。私」
「いいよ、もう。充分わかってるから」
キーが差し込まれて、まもなくエンジンのかかる音がする。
車が少し、震えた。

