「いやです、私。ここで働きたい、ずっと」
「綾さん」
困ったように眉尻を下げる一瀬さんは、でも腕を掴んだ私の手を振り払ったりはしなかった。
苛ついて棘のある雪さんの声が、一瀬さんの代わりだとでも言うように答えてくれたけど。
「だから、譲歩して店は残して店長を雇えばいいっていう話をしているの」
「そんなの、一瀬さんが居ないならお店がなくなるのと一緒です!」
かっと頭に血が上って、そう言い返した。
後からよくよく考えれば、この言葉はかなり告白に近いもので確実に私の気持ちを悟られた気がしたけれど、この時の私は気が付いていなかった。
『こんな店』と、この人は言った。
それが許せなかった。

