君と花を愛でながら

驚いて、隣の横顔を見る。
私と全く同じ言葉を声に出してくれた、その横顔は相変わらず無表情ではあるけれど。


「せっかく綺麗に咲いてくれているのに、誰の手にも渡らずに」


ほんの少し哀しそうに見えたことが、私は嬉しかった。


「あのっ……良かったら、私に任せてくれませんか」


そんな横顔を見ていたら、思わずそう声に出してしまった。
不思議そうに私を見る一瀬さんに新聞紙を広げてもらうように頼み、私は肩にかけた鞄から花鋏を取り出す。


ずっと、出番を待ってた花鋏。
一番最初の仕事がこれでは哀しいけれど、これも仕事だ。


私は、ゴミ袋に入った花をもう一度新聞紙の上に出し、切り花の姿を保ったままだった花を長さ五センチ程に寸断していく。ぱちん、ぱちんと躊躇うこともなく鋏を使う私に、一瀬さんが眉を顰めた。


「三森さん、何を?」
「花に対する、せめてもの礼儀です。綺麗に見てもらうために切り花にされた花だから、最後の姿は人目につかないようにって……生け花をしている母に教わったんです」


本来、咲いて実を付けて種となって、翌年またたくさんの花を咲かせ命を繋げる。
その流れを、切り花として断ち切られてしまった花たち。


切り花としての役目を終えたなら、せめて可哀そうな姿は隠してあげなくちゃ。


それは、私が母から教わったことで、母はお師匠さんから。
生け花をする人全てが、そうしているわけではないと思うけど、その考え方がすごく好きだったから私もそれに倣っている。