君と花を愛でながら



こんなものを、とか咎められるかと思ったけれど、一瀬さんはそんなことは何も言わずに私の前にそれを差し出す。



「どうぞ。余り遅くなると、ご家族が心配されますよ」



話しを聞かれていたと、わかっているはずなのにそれについても何もなかったことにされそうで、私は花切狭ではなく差し出された一瀬さんの袖を掴んでしまった。



「あの」


一瀬さんが驚いて目を瞬く。
早く帰れと言われている気がするのに、それでもどうしても確かめずにはいられなかった。



「お店、辞めちゃうんですか?」



いやだ。
絶対にいやだ。


店がなくなるのも、一瀬さんが店から居なくなるのもどっちもいやだ。
一瀬さんがいるから、この店があるんだもの。