じっとしていただけなのに、なぜか息が上がってた。
加えて気付いた一瀬さんと雪さんの視線が私に集中して、尚更息苦しさが増す。
「綾さん? どうしたんですか」
「えっ? あ……」
驚いた顔で一瀬さんに尋ねられ、自分がここに戻ってきた理由をしどろもどろに答える。
戻ってきた言い訳には少々苦しすぎると自分でわかっているから、余計に言いづらい。
「あ、その。忘れ物をしちゃって」
雪さんを置いて、一瀬さんがカウンターから此方へ歩いてくる。
その背後で、雪さんの眉が不機嫌にゆがめられているのが見えた。
「大事なものですか? 携帯とか?」
「えと……それです。花切狭……」
作業台の上に出しっぱなしになっていた花切狭を指差すと、一瀬さんは「ああ」と頷いて手に取った。

