君と花を愛でながら


余程、ぼやっとした顔で突っ立っていたのか、一瀬さんが私の顔を見て首を傾げた。



「どうかしましたか? 綾さん」



その声にはっと我に返ると、私は慌てて笑顔を取り繕って背筋を伸ばした。



「大丈夫です! 私、少しずつ閉店の準備をしていくので、雪さんのオーダーをよろしくお願いします」



視界の端で私を見る、雪さんの目が怖かった。
ただ何の意味もなく、見ていただけかもしれない。


多分私が、雪さんを恐れているだけのことだ。


くるりと背を向けて、急いでカウンターの中に逃げ込んで下唇を噛む。
雪さんが店に来るようになってから、私の知らない空気が流れるようになった。


彼女が一瀬さんに近づいて、私の大好きなこの店が自分の居場所じゃなくなるような、そんな気がして、怖くて仕方なかった。