君と花を愛でながら

このカフェで、私が特別役に立てる可能性といえばやっぱり花しかないとは思う。
けれども売り物にするような物を作った経験は無いのだから、自信など当然なくて何も行動はできないままだった。


花鋏を鞄に忍ばせて早数週間。
一月の早朝、凍てつく風に頬がぴりぴり痛み、ぐるぐるに巻いたマフラーに顔半分埋めながら小走りで店に着く。


今朝は少し早く目が覚めて、いつもより一本早い電車だった。


「おはようございます、マスター」


扉を開けるとすぐマスターの姿があり、屈んで何か作業をしているようで、私はその手にあるものを凝視してしまう。


「おはようございます、三森さん」


マスターの手にはゴミ袋があり、傷んで萎びたもう売り物にはならない花が集められていた。


「それ……捨てちゃうんですか?」
「ええ、もう傷んでしまっているので」


淡々とした口調に、少し胸がずきりと痛む。
それでも、「手伝います」と言って隣に屈んだ。


手に取った花は、確かに売り物にはならないだろう、萎びて変色しはじめている花びらが目立つ。


……可哀想。
ゴミ袋に透けて見える花達を見て、ついて出そうになった言葉を飲み込んだ時、一瀬さんがぽつりと呟いた。


「可哀想なことをしました」