「えっ」
「去年流行って、見れずじまいだったやつを……そんなに意外ですか」
ぱちん、ぱちん!
と二つ連続で音を鳴らして、花鋏を止め軽く手首を回した。
「いえ、そんなことは」
「すごく驚いた顔してましたが」
本当は、すごく驚いた。
アクション映画を見ている姿が思い浮かばなかったから。
「あは……すみません。意外でした、かなり」
一瀬さんが苦笑いの横眼で私を見る。
そんな些細なことなのにとくんと胸が鳴り、照れ笑いで誤魔化して俯いた。
花はもうすっかり寸断されて、後は新聞紙で姿を隠してあげるだけだ。
握力を使って少しだるくなった右手を軽く動かしてから、広げた新聞紙の端を掴む。
対角線上の端を一瀬さんが掴んで、花を包むようにして手前に折りたたむ。
その上から私の持っている端を被せて丸めていると、さらに衝撃的な言葉を聞いた。
「恋愛映画も見ますしね」
「ええっ?」
「……綾さんは、素直なのは良いですが全部顔に出すと失礼ですよ」
「すっすみません、だって……」
くっくっ、と肩を震わせて笑われて、かあっと顔が熱を持つ。
だ、だってだって、男の人が一人で恋愛映画をって考えるとやっぱりイメージではなくて……。
と、そこで気が付いてしまった。
一人じゃないのかもしれない、と。
そりゃ、そうだ。
恋人と……それこそ雪さんと映画を見たことだってあっただろうし。
じゃあ、昨日は?
そう考え始めたら、止まらなくなってしまった。
けれど勿論ストレートに聞く勇気はない。
や、聞けばいいのかな。
普通に、誰かと見てたんですかーって。
新聞紙で丸めた塊を押して体積を減らしながらぐるぐると考えている間に、時間は経ってしまって。
「……おはよ。二人で朝から仲良しデスネ」
カラコロと鳴るカウベルに顔を上げたら、片山さんが背中でドアを押し開けながら番重を持って入ってきたところだった。
一瀬さんと二人で花入り新聞紙を丸めている私を見て、むっと眉根を寄せる。
その表情に、ひくっと私の頬も引き攣った。

