君と花を愛でながら

もう何度も聞いた「好き」
いつもは、その後に続く茶化した言葉と空気で、逃げ道を作ってくれていたのは片山さんの方だ。


だけど、今日はそれはなくて。
彼は「お願いごと」を使ってそれを無くした。



「あ、えっと」



まっすぐ向けられる目は、今は甘さよりも熱を感じさせて咄嗟に視線を逸らしてしまったけれど。



「よそ見しないで。今日はマスターもいないよ」



その言葉に視線を引き戻されると、苦笑いの片山さんが居た。


逃げられない、この熱さは気温のせいなのか体温のせいなのかわからない。
見つめられて逃げ道も塞がれて、焦る頭で答えを絞り出す。


それなのに。


「つっ、付き合えません!」

「なんで?」


まさか理由を聞かれるとは思ってなくて、そこでまた固まった。
まだこの恋愛迷路から出してもらえそうにない。


「その……片山さんはいい人だと思います。でも、恋とか、そういうのでは無い気がして」

「ほんとに?」


また、だ。
私がなんて返せば片山さんは納得してくれるんだろう。


繋いだ手がじっとりと汗をかいている。
息苦しさで、確実に思考回路は鈍っていた。


「試してみないとわからないんじゃない?」