「暑いね、とりあえず歩こ」
「はい」
片山さんが左手を差し出して、私は自然と右手の水を左に持ち変えて手を繋ぐ。
向日葵畑のどこかで、人の声は聞こえる。
でもここには誰も居なくて、まとわりつく湿気と熱気に、すぐにまた頭がぼんやりとしはじめる。
ゴールまでは、後もう少しのはず。
「俺のお願いごとはね」
蝉の声も、子供のはしゃぐ声も全部が遠い。
近くに聞こえるのは、片山さんの声だけだ。
「はぐらかさないで、真剣に俺の告白を聞いて欲しい」
片山さんのお願いは、私の逃げ道を塞ぐことだった。
緩く熱い風が吹いて、向日葵が小さく揺れた。
驚いて隣を見上げて足を止めた私に合わせて、片山さんも立ち止まる。
「綾ちゃんが好きだよ。だから俺と付き合わない?」

