君と花を愛でながら

暑さでぼんやりとして思考がまとまらない。


お水でも買ってから入れば良かったな。


バッグに入れてた小さな紅茶のペットボトルは、もうとっくに空になっていた。
回りは向日葵だらけで、この向日葵はさっき見た向日葵だったかな、とか考えても全く目印にもならない。


さっきも通った気がする分かれ道を、右に曲がってすぐだった。



「あった!」



やっと見つけたスタンプ台。


だけどその向こうに、反対側からやってきたところだろう片山さんの姿が見えた。



「片山さん!」

「綾ちゃん、良かった」



片山さんが、なぜだかほっとしたような顔をしたけれど、私はそれを気にする余裕もなくスタンプ台に駆け寄った。


だって、私と片山さんじゃそもそもコンパスの長さが違う。
急がなくっちゃ、先にスタンプを押されてしまうから。



「はあ……やった!」



迷路の入り口でもらっていたパンフレットの空欄に、ポンっとスタンプを弾ませる。



「見て! 私の勝ちです!」



そう言って、後から駆け寄った片山さんにパンフレットを掲げて見せると、片山さんはぽかんとした表情だった。



あれ?
ちょっとはしゃぎすぎたかもしれない。



急に恥ずかしくなって、掲げたパンフを下ろしながら俯いて手のひらで汗を拭う。
すると、頭上からくすくすと小さく笑う声がした。



「あんまり暑かったから心配してたんだけど、元気そうでよかった。で、綾ちゃんのお願いごとは何?」

「えっ?」



そういえば、勝った方がお願いごとを言えるのだった。
すっかりその事は頭から抜け落ちていて、さっぱり考えてもいなかった。