君と花を愛でながら


今日の片山さんは、すごく優しい。
いつもの揶揄するようなちょっと意地悪な一面は鳴りを潜めて、ずっと私ばかりを見つめてくれる。


目的地で車を降りたその時に、然り気無く手を掬い上げられて、そのまま。


きっとすごく、女の子の扱いに慣れてるんだろうな。


そんな人にリードしてもらえるなら、私みたいな恋愛初心者はきっとすごく楽。


頭では、そうわかってるのに。
わかってるから、息苦しくなる。


こんなときにも思い出すのは、一瀬さんのことだったり、雪さんのことだったり。


私の知らない、二人の空気だったりするから。



「綾ちゃん。これ、入ってみようよ」



時々上の空になる私に片山さんは気付いているのかいないのか。
私の手を引いて指を指したのは、ひまわり畑の巨大迷路の看板だった。


大きな看板に向日葵畑の迷路全容が描いてある。
っていっても結構広くて、覚えられそうにはないけど。



「結構広いですね」

「入り口二つに、ゴールがここか」

「ここの真ん中でスタンプ押して、ゴールに向かう感じ?」

「別々の入り口から入って、競争する?」

「ええっ?」



じりじりと焼けるような眩しい日差しの中、見上げた片山さんは今日初めての意地悪な顔。
蟀谷に汗が滲んでいた。



「スタンプ台のとこに先に着いた方が勝ち。勝った方が、一つお願いごとが言える」



お昼が近くなって、わんわん、と耳鳴りがしそうなくらい気温が上がってる。
片山さんは、勝ったら何を言うつもりなんだろう。


それが少し怖いけど
「いいですよ」と答えた私はチャレンジャーだと思う。