君と花を愛でながら



「そう、明日デートだから。いつも頑張ってるんだし、早めに帰してあげてもいいんじゃない?」

「えっ、そんな」



片山さんのセリフに狼狽えて一瀬さんを見る。
デートだと思わなくていいって言ったのに、こんな風に『デート』という単語を使うなんて、と焦って訂正しようとしたけれど。


一瀬さんは一瞬瞠目した後、「ああ」と納得した様子で頷いた。



「向日葵畑ですか。どうぞ、今日は上がってください」

「で、でも」



一瀬さんが、私と片山さんがデートしようがしまいが気にも留めてはくれないことくらいわかってるから今更ショックでもないけど。


ほんのちょっとは、痛かった。
だけど気にする間もなく、いつの間にか私の鞄を持って近づいてきた片山さんに手首を取られて反射的に立ち上がる。



「えっ、えっ、えっ」



引きずられて流れる視界で、驚いた顔の雪さんと一瀬さんを見えた。


カランコロンとカウベルが鳴って、扉を通過する寸前に私は慌てて言った。



「雪さん、すみませんお話途中で! お先に失礼します!」



扉が閉まりきる隙間で、雪さんが笑顔でひらひらと手を振っているのが見えた。