君と花を愛でながら


片山さんは、雪さんは今の仕事を辞めるつもりはなさそうだと言ってた。
でも……気が変わったのかもしれない。


だけど雪さんは、きょとんと瞬きをして、一瞬後に声を上げて笑った。



「違うわよ。私は戻らないわ、全く逆!」

「逆?」



意味を計りかねて首を傾げた。


戻らない。寧ろ逆。
あ、店に戻って欲しいって言ってるのは一瀬さんの方ってこと?


それでもやっぱり、片山さんから聞いた話とずれている。
今、このお店を巡ってどんな話がされてるんだろう?


すごく、気になる。
思い切って聞いてみようと少し身体を乗り出したら、厨房から片山さんが出てきたタイミングだった。



「綾ちゃん、送ってくよ」



そう言って、片山さんはなぜか少し怖い顔をして雪さんと一瀬さんを一瞥した。



「えっ? でも、まだ後片付けが」

「いいって、後で俺やるし。明日の待ち合わせもまだ決めてないだろ」

「あ、だったら後片付けしながら……」

「明日?」



その時、ずっと店内の清掃をしていてこちらの会話に目もくれなかった一瀬さんが、初めて反応した。