君と花を愛でながら




……なんでまた一瀬さんなんだろ。
雪さんになんて尚更かないっこないし。


私って身の程知らずなんだろうか。


余りのハードルの高さに眩暈を感じて頭がぐらぐら揺れる。
そして更に眩暈が酷くなりそうなことに気が付いた。


あれ。
店に未練はなくても、一瀬さんに未練がある、ってことは。


寄りを戻したら、ここで働く、ってことじゃ……。



「……大丈夫だよ。雪さんは多分今の仕事辞めるつもりない」



片山さんが急にそんなことを言って、胸の内を悟られた気がして驚いて顔を上げた。



「だからその辺で折り合いがつかないんじゃないの、二人の関係は。マスターはそのつもりないってはっきり言ってる」

「え? 復縁とかのつもりがないってことですか」

「うん」



ややぶっきらぼうな顔で、こちらを振り向く。
その手のひらには、綺麗なデザートプレートが仕上がっていた。



「っていうか、片山さんお二人の話結構聞いちゃってるんですね」

「だって雪さん俺が片づけしててもお構いなしで話してんだよ、言っとくけど盗み聞きじゃないからね」



プレートを差し出され受け取ろうと両手を伸ばしながら、私は内心でホッとしていた。
だけどそんな自分がとても性格が悪い気がして、すぐに凹んだ。



「マスターもさ。その気がないなら、もう連絡してくるなとか二度と会わないとかはっきり言えばいいんだよな。案外不甲斐ないね」