私が余程情けない顔をしていたのか、片山さんは間近で目を合わせた後、ふっと苦笑いをして背を向けた。
「……全く、あの人も性懲りもなく毎日毎日、粘着質だよな」
「あの……雪さんって、ただマスターに会いに来てるだけ、なんですか?」
店が終わって私が帰った後、一体どんな話をしてるんだろう。
こうも毎日っていうのは、何か理由があって来てるのじゃないだろうか。
片山さんは私よりも遅くまで店に居るから、何か知っているんじゃないかと思って聞いてみた。
片山さんは、作業の手を止めることなく、何か唸るような声を出してからひとつ溜め息を落とす。
「ん……なんか、店の事を話し合っちゃいるけどね。雪さんは、やっぱり未練があんのかなぁ」
「えっ……未練って。お店で働きたいってことですか?」
「いや、そうじゃなくって」
未練がお店のことじゃないのなら、じゃあ、つまり。
一瀬さんと、よりを戻したいってこと?
つきん、と胸が痛む。
この胸の痛みは、私はよく知っていた。
雪さんの姿が、姉の姿とダブって見える。
もう誤魔化しきれないくらいに自覚してしまった。
そして、自覚した途端の失恋の気配に打ちのめされそうだった。

