君と花を愛でながら

思いのほか簡単に手は抜けた。



「あ、あのっ」

「うん?」



手は離れたけど、すぐ目の前に片山さんの顔があるこの状況には変わりない。
ぐるぐると頭が混乱して、涙が出そうで。



「も、帰らなきゃ。電車が」



目の前もぐるぐるして、キスされた指先も顔も熱くて。
片山さんの顔が、もうまともに見れなくて、横を駆け足ですりぬけて。


逃げ出して、しまった。



「あ、綾ちゃん!」



片山さんの声を聞きながら路地を抜け出し、まっすぐ駅の改札まで走る。


定期を出すのに手間取って、つい後ろを振り向いたら。



「……っ」



片山さんが少し後ろの方で、私に向かって手を振っていた。