「あ、あの、人が見てるから」
「わかってるよだからなんもしねーけどさ」
……なんか、口調が。
急に荒くなった、気が……。
私そんなに怒らせちゃったのかな、とおろおろと片山さんを見上げる。
その後ろを、何事かと私達の方をチラ見しながら何人かが通りすぎて行った。
相変わらず片手は繋がられたままで、片山さんの親指がするすると手のひらを掻く。
不機嫌に眉根を寄せたまま、片山さんは少し目線を横に逃がして何かに迷ってるみたいだった。
「……片山さん?」
「綾ちゃんがマスターを信頼してるのは、傍から見ててもよーくわかるんだけどね?」
「は、はい」
何か言葉が続くのかと思ったら、少し無言の間があった。
「あ、あの?」
「……ごめん。やっぱいいや」
「えっ? 何ですか気になりますよ!」
「いい。……意識されたら腹立つし」
「えぇぇ……なんなんですかもう」
はぐらかされて、それで話は終わったのかと思うのに、まだ距離は縮まったままだった。
建物の固い壁に背中を預けたまま、背の高い片山さんを下から見上げていると、困っているのは私のはずなのに、なんだか私が困らせているような気もしてきて申し訳なくなってくる。
だって、片山さん、まだ目を逸らしたままだし。
相変わらず、不機嫌そうに。
「意識するのはこっち。もうストレートに言うけど、俺は綾ちゃんとデートがしたい」
直球が、来ました。

