君と花を愛でながら

びっくりしたぁ。
マスターって、あんな風に笑うんだ。


普段が無表情なのに加えて、多分私よりは十歳程は年上に見える。だから余計に気後れして上手く話すことができないけど、そんなに怖い人ではないのかもしれない。


扉を押し開けると、コロン、と一つカウベルの音が鳴る。出入り口から少し逸れた軒下で、三つ年上の幼馴染が私を見て笑った。


「おつかれ、綾」
「悠くんっ」


先ほどから緩みっぱなしの頬が、ふにゃりと蕩ける。
きっと、私のそんな表情はわかりやすいのだろう。


肝心の悠君にはさっぱり伝わってないのは、もうずっと長く一緒に居すぎているからかもしれない。


「咲子が駅で待ってる。一緒に外で食事しようって」
「お姉ちゃんが? あ、そうか。今日……」

「お父さんとお母さんデートみたいだから夕飯ないんだって」
「うん、昨日そんなこと言ってた」


うちの両親は、未だにすっごく仲が良くて私達が高校生になった頃から月に一度は夜にデートに出かける。
そんな日は、姉がご飯を作ってくれたり外に食べに行ったり、そして大抵お隣に住む悠君も一緒。


悠君の家は両親共に仕事で遅くまで帰って来ないことが多く、子供の頃からよくうちにご飯を食べに来ていた。