2人で話していると、指定の10時30分まであとわずかとなっていた。



「折角だから、展望台に行こうか?」



先に歩を進めようとした新太郎さんだったが、私はその場から動く気にはなれなかった。


いや、動けなかった。


黙ったまま首を左右に振る。



「どうしたの?」



再び心配そうな顔を浮かべる新太郎さんだったが、私は表情を変える事は出来なかった。


智君の気持ちは嬉しい。


智君の私と新太郎さんを引き合わせようとする気持ちはとても嬉しい。


でも…。


それでも…。


私の頭の片隅にある言葉が前へ踏み出す事を許さなかった。