暫くその場で虹を見た後、いつもの通天閣の方角に目を向けた。 公園のベンチ。 いつも私が座って描いているベンチ。 その脇に誰かがいる。 背を向けて、通天閣を眺めている。 私の心の雲が急に流れて行った。 体中の震えを感じる。 この震えは。 驚きと、そして嬉しさの震え。 震える右手をまっすぐに伸ばし、そして呟いた。 「と、智君…。」