22時。俺はソファにドサリと腰かけた。柔らかな革に身体が沈み込む。
休日出勤は15時過ぎには終わり、俺は珍しくどこにも寄らずに帰宅した。マイホームパパのヤッさんは、子供の習い事の送り迎えがあるとかで、14時頃には帰っていった。
このマンションに住んで3年になる。間取りは2LDK。家具には妥協しない主義だ。ここで誰にも邪魔されずに好きな音楽を聴くのが好きだから、音響にもこだわっている。俺の「聖域」を冒されるのが嫌で、セフレの女達は入れたことがない。
家にいるときは大抵家事をして過ごす。一人暮らし歴は10年になるから、掃除、洗濯はお手のものだ。料理も祖母に教わったので一通りできるが、自分だけのために作るのは面倒だ。一度ヤッさんの一家を招いたときには腕を振るったな。皆、随分と褒めてくれた。
観るともなしにテレビを点ける。くだらないドラマだ。今が旬の俳優が出ているが、ひどい演技だった。きっとすぐに消えるだろう。
俺はスマホを手に取り、マリカに送ったLINEのメッセージを確認する。
まだ「既読」にはなってない。
