「いつものナンパかぁ?」

「俺が、じゃないよ。向こうがナンパしてきたんだ」

「ろくなもんじゃねぇな」

ヤッさんが言う。

「いつも言ってるだろ。お前にはもっとマジメな子が合うって」


「ろくなもんじゃねぇ」。状況だけ説明すれば、ヤッさんがそう思うのも無理のない出会いだ。でも、俺はマリカのことを単なるナンパ女だとは思っていなかった。彼女が昨日の行動をとったのは、そして外見と身元を偽っているのには理由がある。その思いは確信に近かった。

俺の中のどこかが、マリカと共鳴しているような、そんな不可思議な感覚があった。



「うまく言えないけど…きっと、俺とアイツは似てるんだと思う」

「どこが」

「根本的に、相手を信用してないところ、かな」

はぁ~~~。

ヤッさんは深い溜息をつくと言った。

「俺には計り知れねえ世界だわ。ま、定期的に進捗聞かせてくれよ」